【夏目友人帳】人と妖の優しい絆を描く、心温まる物語

マンガ・アニメ

「一番好きなアニメは何か?」と聞かれたら、私はおそらくこの作品を選びます。
非常に人気のある有名な作品ですので、ご存じの方も多いと思います。
緑川ゆきさんの原作で、アニメの方は2024年秋になんと第7期が放送されたというぐらいですから大人気シリーズといえますね。

ちなみに7期の放送までに7年間空きましたので、さすがに6期でもう終わりかなと感じていたファンの方にはうれしいサプライズだったと思います。
長編ストーリーではなく基本的に1話完結ものですので、毎回いろんな人や妖がでてきて、それぞれ様々なドラマを展開するところが魅力です。あまり派手な戦いや壮大な冒険を繰り広げるわけではなく、静かで心に響く物語が美しい背景画や音楽もふくめて心癒される作品となっています。

この記事ではこの作品の魅力的な部分や、7期も継続していますので数あるエピソードの中から特に心に残ったエピソードを紹介します。まだご覧になっていない皆さんにもぜひ一度触れていただくきっかけになればとおもいます。すでにファンの皆様からは、自分はこのエピソードがよかった、というご意見も伺いたいです。

夏目友人帳の作品世界

友人帳

この作品のキーアイテムである「友人帳」。主人公の高校生夏目貴志が、祖母である夏目レイコから受け継いだ彼女の遺品のひとつです。強力な妖力を持つレイコがあらゆる妖に勝負を挑み、負かした妖の名前を綴った古い帳面ですが、これは多くの妖怪の真名を縛った貴重なもので、妖の間では「ここに名前のあるすべての妖を従え使役することができる」ものとされています。

このため、この友人帳を奪って多くの妖を支配しようとする妖と、ここに縛られている自分の名前を返してもらおうとする2種類の妖怪が貴志のもとにやってくるということになるわけです。

ニャンコ先生

名前の奪還を求める妖怪に追いかけられていた貴志が、たまたま結界を破ってしまったために現れた上位の強い妖である「斑」と出会い、自分の死後は友人帳を譲る、という約束で斑を用心棒としてしまうのです。
斑は本来は白い大きな獣の姿の妖ですが、長期にわたり招き猫を依代として封印されていたため、普段は招き猫の姿をしています。依代のため普通の人間にも姿を見ることができ、用心棒の「ニャンコ先生」として貴志の傍で過ごすことになります。

「見える」能力

貴志は強い力をもった祖母レイコと同じく、普通の人には見えない妖を見ることができる能力をもっていました。幼いころに両親を失い、この見える能力のために奇行が目立つため周りの人から気味悪がられ、親戚中をたらいまわしにされてきましたが、遠縁である親切な藤原夫妻に引き取られ、かつて祖母レイコも暮らしたことがある今の土地にきて、ここでの暮らしの中でいろいろな妖たちや人たちとの交流を通し物語が進んでいきます。

作品の魅力

「友人帳」という名前からして、レイコは決して妖たちを支配しようとしていたわけではなく、ただ関わった記念に名前を集めていたのだと思われます。貴志も決して妖を使役しようとするわけではなく、ただここに書かれた妖に名前を返すことが、これを祖母から引き継いだ自分の役目だととらえます。

この作品の魅力は、何といっても悪役らしい存在がほとんど登場しない点にあります。人に害をなそうとする妖怪が全く出てこないわけではありませんが、彼らが主要な役割を担うことはごく稀です。むしろ多く描かれるのは、それぞれの想いを抱えながら人と関わる妖たちや、妖と関わりを持った人々との交流です。そこから生まれる物語は、切なさの中にも温かさがあり、見終えた後に胸に残る余韻がなんともいえず心地よいのです。

心に残る名エピソード

第7期でよかったエピソード

ここから先は少しネタバレありになってしまいますので、まだ見ていない方はご注意ください。

2024年秋に久々に放送となった第7期もいろんなエピソードが盛りだくさんで、新しい登場人物もたくさん出てきて非常に楽しませてくれました。依島さんや多軌のお兄さんなど。それぞれ個性的で魅力的でした。
今回は特に「祓い屋」的場静司の登場が多かったような印象ですね。どちらかというと悪役的な印象の的場さんですが、なんとなく今回でイメージが変わった方も多かったかもしれません。

さらに「ちょび」の正体が判明したのも意外でした。どおりでニャンコ先生を「チンケ」呼ばわりするなど、顔だけでなく態度も異様にデカかったこともうなずけますね。

その中で一番心に残ったエピソードを上げるとすれば、第11話「名前を教えて」です。

貴志とニャンコ先生は名前を返して欲しがっているという妖怪ソラノメに名前を返しにいきます。ソラノメは「自分の名前は1枚目にある。」といいます。相手の心がわかるこのソラノメという妖怪が、レイコが初めて名前を書かせた妖怪だったのです。

物語はソラノメの回想話で進んでいきますが、この話はレイコがどうして妖に勝負を仕掛け、勝てばその名前を書かせるということを始めたのか、そのはじまりと思える話です。どちらかというと人と妖の交流というよりは人と人との関わりを見守ってきた妖怪の思い出話という体裁で、少し切ない物語です。
ソラノメに名前を返したときに流れ込んでくるソラノメの記憶、それは相手の心がわかるソラノメに流れ込んできたレイコの夢の記憶でした。それがまた切なくて心に残ります。

ソラノメの声優さんが津田健次郎さんで、そのキャスティングも良かったです。

今までの話でよかったエピソード

もちろん第7期まで続いてきた作品ですから、ほかにもたくさんのいいエピソードがあります。
参考までに私が好きなエピソードをあげます。あくまでも私個人の独断によるものですのでご了承ください。
ほかにもこれが良かったというエピソードがあればコメント欄で教えてください。

1期第6話「水底の燕」
ヒナの頃に人に救われたことで親鳥に見放され、やがて妖となった燕の妖。
それでも彼女は、自分を助けてくれた「優しい存在」である人間を慕い、彼に再び会いたいと願い続けます。
しかし実際に出会えたとしても、人は妖を認識できない――それでも彼に会えたことをただ喜び、会わせてくれた夏目にただ感謝する。その切なさが、心に深く余韻を残す物語です。

1期第8話「儚い光」
かつて妖を見ることができたが突然妖を見ることができなくなった男性と蛍の妖との悲恋を描く物語です。
最期に蛍は妖としての生を捨て、ただの蛍として彼の前に姿を見せ、蛍としての儚い生涯を終えることを選択します。決して結ばれることのない人と妖の切ない話です。

1期第10話「アサギの琴」
病になった美しい妖であるアサギの最後に琴を弾きたいという願いをかなえるために奔走する妖アカガネ。
そのためにアサギを夏目に憑依させ、アサギの願いのために夏目をこき使うアカガネですが、結局アサギの願いというのは心優しきアカガネのために琴を聞かせてやりたいというものでした。

2期第9話「桜並木の彼」
冬枯れの桜並木が描かれた絵の中に住む「彼」と彼を想いその絵とともにずっと旅を続けてきたという妖:巳弥の話です。結局絵の中の彼と巳弥は最後に姿を消すのですが、彼らはきっと想いを成就して二人で旅に出たのでしょう。こちらも人と妖の恋の話。

3期第3話「偽りの友人」
夏目の昔のクラスメイトの柴田と藤の木の妖である村崎の恋の話。妖として力を失いながら決して柴田を食べて力を得ようとせずに死を受け入れた村崎と彼女を妖と知ってからも彼女が消える瞬間まで一緒にいようとする柴田の想いが涙を誘います。

3期第4話「幼き日々に」
子供のころの孤独だった日々になにかとかまってきた妖と最後に変な別れ方をしたことが心のつかえになっていた夏目が、今の幸せな日々の中で友人たちと遠出をした帰途にそのことを思い出し、その妖に感謝の言葉を伝えに行きます。ずっと妖目線の回想と心情描写で進み、最後に成長した夏目が現れるシーンが心に響きます。

4期第4話「代答」
戯曲「シラノベルジュラック」のような話。古紙を再生するという妖怪カリガミを呼び出してほしいと夏目のもとを訪れる声真似が得意な妖怪ヨビコ。夏目は事情をきき、カリガミ探しに協力します。
自分がしたことの罪の意識を抱え、彼女の本心を知りたいという気持ちとその答えが心を打ちます。
手紙を読みたいという想いでカリガミを探しながら実は字が読めなかったということも切なさを感じます。

5期第5話「結んではいけない」
多軌の祖父の施した中途半端な結界のせいで、多軌家から出れなくなってしまった妖が多軌に助けてもらったことで多軌の優しさに触れ、同時に彼女への想いを募らせます。ただしこの想いは決して成就することのない想いであることを十分に理解している妖の苦悩が切ない物語です。

6期第8話「いつかくる日」
幼いころに知り合った妖の葵と人間の香。やがて成長するにつれ人同士の付き合いより妖である葵との付き合いを優先する香を心配し、やがて葵に好意を寄せるようになった香に対し葵は香と縁を切り、香から離れることを決意します。一方で葵をあきらめきれない香は葵を捕まえるための一計を講じ、夏目も香に協力します。
人と妖は決して交わらない、後でもっと悲しい想いをすることになると思いながら、葵は結局香の想いにこたえる選択をします。

6期第9話「ながれゆくは」
学校の勉強合宿で訪れた先の近くにある「四ツ面塚」という社にはお面が3つしか飾られていません。
四つ面塚の由来となぜ面が3つしかないのかの理由が感動を呼びます。

その他にも「祓い屋」とよばれる稼業の人が出てくるエピソードがお好きな方もいらっしゃるかもしれません。
それぞれに魅力的なエピソードがたくさんですから、皆さんもぜひお好きなエピソード、おすすめのエピソードがあればご紹介ください。

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