この記事はタイトルからもわかるように、劇場版 鬼滅の刃 無限城編3部作はどういう区切り方をするのかという考察を含んでいるため、当然ながら原作を読み終えているということが前提になっております。したがって大いにネタバレを含みますので、原作未読組の方で映画が終わるまで先を知りたくない、という方は閲覧を控えていただいたほうがよいと思います。
『無限城編 第一章 猗窩座再来』の感想
皆さんはすでにご覧になられたでしょうか。私はもう3回も見に行ってしまいました。とにかくすべてにおいて最高のクオリティでした。いやー、よかった。
3部作になる、という情報はもちろん心得ていたものの、なるべく前情報を入れないで、ただ公式のPVと「柱稽古編」の復習だけして映画館に臨みました。2時間半もあるなんて知りませんでしたが、2時間半と感じさせないほどの圧倒的内容で、とにかくあっという間に時間が過ぎたなという印象でした。
上がり続けていくハードル
そもそも鬼滅の刃、TVシリーズの第一期『竈門炭治郎立志編』の第19話「ヒノカミ」を見た時の感動がすごくて、ネットでも「神回」と話題になっていました。しかし劇場版『無限列車編』の煉獄さんと猗窩座の戦闘シーン、特に炎の呼吸 伍ノ型「炎虎」、さらに奥義玖ノ型「煉獄」の映像はすさまじく、そのあとに続く煉獄さんの母上瑠火さんの「立派にできましたよ。」からの煉獄さんの笑顔のシーン、これ以上の感動はあるものかと思ったものでした。
しかし次の第2期『遊郭編』第10話「絶対諦めない」で、尋常ではない映像を見せられて、こっちが真の「神回」だったと認識を改めさせられました。さらに第11話「何度生まれ変わっても」での妓夫太郎と堕姫の悲しすぎる過去と兄妹愛にはさんざん涙腺を痛めつけられて、最終2ラウンドで畳みかけるようにボコボコにされ、あっけなくKO、という印象でした。特に第10話は夜中にこんなものTVで放映していいのか?と思わせるほどのレベルでした。
今回復習のために見た『柱稽古編』第7話のエンディングと第8話のオープニングの無惨登場シーンと、産屋敷邸爆破シーンなどの映像もすばらしく、どれも最高のシーンでした。
そのように最高の映像を作っては、次にはさらにその上をいってしまうのがこの鬼滅の刃という作品ですが、これから完結までにどれだけハードルを上げ続けるのか、見てるほうが心配になるレベルです。
今回の『無限城編 第一章 猗窩座再来』ですが、やはりこれまでのさらに上をいくクオリティを見せてくれましたね。無限城の描写など「そこまでやる?」ぐらいの気合の入れよう、今作のメインの義勇+炭治郎VS猗窩座の戦闘シーンも本当に鳥肌が止まりませんでした。
役立たずの狛犬
「回想シーンが長かった」のような批判も一部では出ているようですが、これが鬼滅の刃のカラーというか魅力の一つですから、私はそれほど気にはならなかったです。と、いうか原作読了組である私にとって、実は猗窩座の過去回想はこの作品でもっとも好きなエピソードでした。なんならこれをアニメで見るために待ち続けていた、もうこれを見ないうちには死ねない、というぐらい楽しみにしてました。マンガのサブタイトルがまたいいんですよね。「役立たずの狛犬」タイトルだけで泣ける。
猗窩座は鬼の中でも純粋に強さを求め続け、強い者はもっと強くなるために鬼になったらいいのにと、強者に出会うたびに鬼へ勧誘しています。それは自らも強くなるために他ならないのですが、非常に哀しいのは、なぜそれほど強さを求めるのか、その理由を忘れてしまったことです。
父親を、家族を、愛する人を守るために強くなりたかったはずなのに、結局そうした思いをかなえることはできませんでした。目的がなくなったことを忘れ、ただ「強くなる」という手段のみに執着していたのでした。
同時に猗窩座は弱者を嫌悪する言葉を吐き続けます。「強者は弱者を守り、守られた弱者は強くなってまたほかの弱者を守る」と、煉獄さんに身をもって教えられた炭治郎にはこの弱者嫌悪は到底受け入れられなかったのですが、猗窩座は最後には自分が本当に嫌悪していた「弱者」というのは、隣の剣術道場の息子などではなく、実は他ならぬ自分のことだったと思い出しました。
「狛治」の「狛」は「狛犬」の狛で「守るべきものを守るためにある」と師である慶蔵にいわれますが、「猗窩座」という名前は「住処に座る去勢された犬」という意味です。役目を全うできずただ意味もなく座っているだけの犬になってしまったという悲しい意味が含まれていて、それが「役立たずの狛犬」というタイトルに集約されています。
誰もが「一番泣いた」というシーンが狛治が恋雪に「許してくれ」と許しを乞うシーンですね。
私はこの前の花火をバックに恋雪と狛治が将来を誓うシーンですでに涙腺が崩壊していたのですが、やはりこの許しを乞うシーンは狛治役の石田彰さんの迫真の演技で涙が止まりませんでした。
正直『無限列車編』で猗窩座役が石田彰さんと聞いた時には「他にいなかったか?」と思うほどに違和感があったのですが、今回のこれを見て、「やはりアンタしかいなかったよ!」と心底思いました。いや、素晴らしかった。
ひとつ不満というか、まあどうでもいいことなのですが、狛治の父親が死んだときの遺書で、
「俺は人様から金品を奪ってまで生き長らえたくはない。」
というくだりが原作にはあったのですが、それがカットされていました。何か出さないほうがいい理由でもあったのですかね。知らんけど。
人様からお金をだまし取って生きながらえている人、今の世の中にはいっぱいいると思います。
だからこのセリフ外してもらいたくなかったんですけどね。
第二章はどこまで?
やっと本題に入りますが、第二章はどこまでやるのか?
そもそも『無限城編 三部作』をもって最終回までいくのか、いかないのかという議論もありますが、私は『無限城編』はあくまでも無限城での戦いまで、鬼舞辻無惨戦から完結までは別でやる、と考えています。意外と無惨との闘いって長いんですよ。伊黒小芭内の過去回想シーンもあるし、継国縁壱目線での過去回想もある。現代版のエピローグもありますしね。
単純に原作の話数で計算して3部作で完結までもっていくには、第二章、第三章はそれぞれ3時間を超える、という考察をしている方もいます。もちろん原作カットして尺調整すればそうならずに済むと思いますけど、ファンの皆さんは本当にそれでいいのかな?
『無限城編』では終わらないと考える根拠
2019年のアニメ放送開始からもう6年経っているのですけどアニメのほうはまだ完結に至っていません。今回の映画をみてから原作を読み返したところ、やはりかなり原作に忠実にストーリーを進めています。原作の内容をしっかり反映させたうえで、アニメ側でちょこちょこ補完するという方法でこの作品をここまで世界的にも評価される作品に昇華させてきたのですから、今後も尻すぼみになるようなことは絶対にしないと思います。これまで積み上げたものが、ともすれば台無しにならないとも限りません。そのような愚はまず犯さないでしょう。
皆さんは「約束のネバーランド」という作品をご記憶のことと思います。ちょうど鬼滅の刃と同じぐらいにジャンプで連載されていて、単行本も20巻で完結ですから長さもまあ同じぐらいで、「鬼滅の刃」と人気を二分するほど非常に人気のあった漫画でした。ただアニメは二期で完結させようとしてめちゃくちゃに改編され、その結果酷評されまくった作品です。あの轍は踏んではいけない。もはや別次元の作品になってしまった「鬼滅の刃」においては、原作を削って駆け足で完結する、という所業はちょっと考えられません。
今回は多分第一章で猗窩座の最後までもっていきたかったというところはあると思いますので、長尺の2時間30分となったと思いますが、これは今回限りだと思います。第二章、第三章は2時間ぐらいの尺になるのかなと思います。
そう考えると第二章では童磨戦決着と黒死牟戦の途中まで、第三章では黒死牟戦決着から鳴女の死による無限城崩壊までということになると思います。
ただしそうなるとそれぞれ結構盛らないとそこそこの内容にならないのではないかなと、ましてや次作で毎回前作のハードルを超えていくという自虐的な縛りまで自ら課しているわけですから。
ではそれぞれどこを盛るのか、それぞれの感動ポイントはいったいどこなのか、そこを考察する必要があります。あくまでも原作にきちんとそった流れで。
上限の肆 鳴女の過去
鳴女は半天狗、玉壺の死後に上限の肆にまで出世しています。CVも井上麻里奈さんですし、そもそも無限城を構築している鬼なのですから重要なキャラです。彼女にも人間時代のエピソードがあり、それは原作には登場しないのですが、ファンブックで確かに記載があります。
鳴女の過去回想も何らかの形で登場させるのではないでしょうか。これは時系列的に第三章になりそうですが、場合によっては前に持ってくるなど調整はきくと思います。
粂野匡近の遺書
もうひとつ、補完できるエピソードがあります。
実はこれがこの記事で一番言いたかったことなのです。
意外と皆さんからは軽視されている感がありますが、実は私の好きな感動ポイントのひとつです。
不死川実弥の回想シーンで出てくる「粂野匡近」の遺書の言葉ですが、この言葉は実は無惨を倒した後の本編最後のシーンにも出てきます。
大切な人が笑顔で 天寿を全うするその日まで 幸せに暮らせるよう
決してその命が 理不尽に脅かされることのないよう願う。
例えその時自分が 生きてその人の傍らに いられなくとも 。
生きていて欲しい。生き抜いて欲しい。
特攻隊員の遺書を思わせるような、切ない、美しい言葉です。
お館様は「(匡近は)光輝く未来を夢見ている。」と実弥に伝え、そして「私の夢と同じだよ。」といいます。
これを書いた粂野匡近は本編の実弥の回想で4コマしか出てきません。しかも3コマ目ではもう死んでいます。しかし実弥が今柱としてここにあるためには、いなくてはいけない重要な存在で、実弥の玄弥に対する態度の裏にある気持ちや、実弥の炭治郎に対する態度にも大きな影響を与えている存在なのです。

匡近が死んだのは下弦の壱との闘いによるもので、この時一緒に下弦の壱を倒した功績で実弥は柱になっています。柱になったときの柱合会議で実弥はお館様に暴言を吐き、他の柱たちを焦らせるのですが、この時お館様は実弥に匡近の遺書を手渡し、「匡近は実弥に弟を重ねていた。」というのです。
原作中のエピソードでは匡近は同じ鬼を追っていて実弥と出会い、実弥に育手を紹介した、とだけしか書かれていませんが、匡近と実弥のエピソードはもうすこしふくらませることができます。
風の道しるべ
匡近に風の呼吸の育手を紹介され、実弥は鬼殺隊に入りますが、性格がそもそもアレですし、顔も態度も怖いので誰も近づいてきません。しかし匡近だけは実弥に臆することなく、自分の師匠を紹介したのだからおれが兄弟子だぞ、とやたらと兄弟子風を吹かせてはニコニコと馴れ馴れしい態度で近づいてくるので、実弥は正直辟易していました。
これ誰かに似てるなと思いませんか。炭治郎が玄弥に対して馴れ馴れしくしてくるのと同じような感じで、玄弥が炭治郎に調子を狂わされるみたいに、実弥も匡近には調子を狂わされていました。
実弥が炭治郎に対してやたらとイライラするのは、匡近を思わせるところがあるからではないでしょうか。猗窩座が慶蔵の影を振り払い、炭治郎に対して「やはりお前は不快だ。」と発言する理由は、炭治郎が慶蔵に似ているというのと同じです。ここも伏線になっているのかなと感じます。
また、実弥は匡近が死ぬまで匡近が弟を鬼に殺されて、それで鬼殺隊に入ったということも知りませんでした。匡近がやたらと兄弟子風を吹かせては、あれこれ世話を焼いて自分にかまってくるのは弟への思いもあるということに気づき、守るべき大切な人は鬼に近づかせない、という気持ちを強くします。胡蝶カナヱとのカップリングもファンの間では話されていますが、妹が鬼殺隊士になっていることを容認しているカナヱに対しても実は、「俺は胡蝶とは違う。」と強く反発しています。だから実弥は玄弥が鬼殺隊に入ったことは絶対に受け容れることができませんでした。
そういう気持ちがあってこその玄弥への態度であり、「俺には弟はいねぇ」発言なのですが、そういう実弥の思いの底にあるものを見せられたうえで、玄弥の最期のシーンを迎えると、これはもう号泣間違いなしです。あの粗暴で怖ろしい不死川実弥が、あれだけ無下に突き放していた弟の最期には取り乱して号泣する、俺の兄ちゃんはこの世で一番優しい人だから、このシーンは涙なしには到底直視できません。もっともこのシーンは第三章になるでしょうが。
さすがに下弦の壱との戦いまで盛り込んでしまうのはTOO MUCHですが、匡近との回想シーンは第二章の中にもっと盛り込むことができると思います。ここまであまり大きな見せ場がなかった風柱が第二章、第三章では中心人物となりますし、見る人にはもっと感情移入してもらいたいと思います。粂野匡近は不死川実弥を語る上で外せないキーパーソンですから、もっと深堀りしてもらいたいですね。
ついでにCVは神谷浩史さんでお願いします。有名な声優さんはことごとく参加してる鬼滅の刃で、神谷浩史さんほどの大物がまだ参加してないんですよね。中村悠一さんも出てねーなぁ、と思ってたら今回ちゃっかり出てましたし。まあただの妄想ですけど。
第二章での感動ポイント
第三章での感動ポイントというか号泣ポイントはたくさん想像できるわけですが、第二章でも製作側は無理やりにでも泣かせに来ると思うのです。それはどこになるでしょうか。それも楽しみにしたいところですが、第二章ででてくると思われるところで実は軽く感動するシーンがあります。
号泣ポイントとはいきませんが、皆さんお気づきでしたでしょうか。
今回鎹鴉が飛び回って勝負の結果を告げるところがありました。
童磨VSしのぶ戦の後「上弦ノ弐トノ戦闘ニヨリ、胡蝶シノブ、死亡!」と告げていました。
猗窩座戦決着の後は「炭治郎、義勇、上弦ノ参 撃破!」と叫んでいました。
実は原作では童磨戦決着の後、鎹鴉は
「シノブ、カナヲ、伊之助、3名ニヨリ、上弦ノ弐 撃破!!」と叫んでいるのです。
つまりしのぶさんもちゃんと童磨撃破の頭数に入っているんですね。すでに一度死亡をふれ回ったにもかかわらず。これはちょっといいなと思いました。鴉のくせにナイス気配り。
そういうことで、第二章でもしのぶさんの回想が結構でてくるんだろうなと思います。
伊之助もしのぶさんに母親の面影を重ねていたし、カナヲもカナヱさんが死んだときに泣くことができなかったことをずっと悔やんでいました。今二人の仇を取ったことで、また胡蝶姉妹の回想によって大いに泣かされるのではないでしょうか。
それに匡近の遺書のシーンの回想でもう一度感動を呼ぶことができると思います。
どこまで作りこんでくれるか、第二章の楽しみのひとつですね。
まとめ
第二章は童磨戦決着と黒死牟戦で岩柱が合流して、さあこれから本番だ、というところまで。
第三章は無限城が崩壊して市街地戦に入り、炭治郎が死んだ!となって禰豆子が飛び出していくところまで、という風に予想したのですが。
当然第二章では匡近の回想を盛っていただきます。
といっても製作側が『無限城編は劇場版で三部構成』と公表した時点ですでに構成は決まっているわけですから、このあたりの考察をするのは空しい気もしますね。
ただ原作を削って駆け足になる、というのと、原作をきちんとカバーしたうえで補完して終わりを急がない、というのを比べれば、やはり希望的観測も含めて後者になるのかな、なってほしいな、と思います。この気持ちを少しでも製作の方に伝えたい。今さらもう遅いでしょうが。
皆さんはどうお考えでしょうか。

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